小さな狙撃手 1/20
この計画は、隼人が実は即興で考えたそうだ。しかし中身は巧妙かつ卑怯は作戦である。
幸子が登紀子の姉の手下に遭遇してリンチを受けた ⇒ 学校でなんとなくおおごとにして登紀子を軽く煽る ⇒先生方が動いたら幸子が呼び出される ⇒ 幸子がこの件を論破できたら学校側が動く。
しかしここから学校側の対処次第で選択肢が複数出てくる。
『学校側が対処しなかったら何事もなく逆襲に出る』。『学校側がもし動いたら登紀子の立場には影響はないにしろ姉が咎められるため、幸子が逆襲するのはこの数日後である。』
2通りに略したがこのことを作戦実行3日前、幸子が入院していたときに説明する。
そして実行3日前に事前に智雄と春香と高貴に説明。
「おま、そんなことできないって、やったらバレるぞ」
「いや、そこをなんとかしてくれ!幸子のためだ!」
「えぇぇ、無理じゃね?」
「何が無理なんだよ・・・。」
「演技力ないし、」
「派手にやってくれればいいんだ、奴を潰しておかないと幸子が---------------」
智雄を電話で無理矢理説得。
「面白そうじゃない、隼人にしては結構な策略じゃない。」
春香は快諾。
「大森は敵に廻したくないな・・・。」
「ほう、では幸子はそのまま野放しに------------」
「毎回ボロボロになって学校に来る幸子は見たくない、だが何故あんなおとこ女が・・・」
「脅迫されて無力化して、そこからボコボコにされたんだとよ、とにかくやってくれるよな?」
「わ、わかったよ・・・」
最近の男子は弱気です、逆に女子が好奇心旺盛なのか、これは今流行りの草食系男子&肉食系女子・・・?
それは置いといて・・・。
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3時間目の授業中、幸子が先生との話し合いに終わったのかちょっと疲れた顔をして帰ってきた。
授業が終わり、さっそく結果報告を聞きに幸子の元へ・・・。
この作戦がもし失敗だったら最悪の場合、隼人達も危険に瀕すことになる。なので隼人達は生唾を飲み、幸子の報告を耳を集音機のようにして聞いた。
「そっ、それで、どうだったんだ・・・?」
「ああ、あのマイペース鈍感教師は軽く捻ってやったよ。さて、戦争が始まるぞ-----------」
幸子が言いかけると隼人達は皆真剣な眼差しを幸子の目に向けた。それはまるでスターウォーズに登場する武器のライトセーバーのようだった。
「もし、これで学校側が動かなかったら」
「どうするんだよ?ん?」
「私達どころか、」
「幸子が一番学校に居にくくなるんだぞ!!」
隼人、智雄、春香、高貴の順に事の重大さを伝えるかのように言う。
さすがに幸子も気圧されたのか、
「た、多分大丈夫だから-----------皆視線怖い・・・。」
気丈な幸子でもさすがに気圧される、どんな視線だったのかは読者次第です。ただ、ヤクザみたいな、クマみたいな、そんな感じである。
そんなこんなで後は普通に授業を受けて、下校時。
バレー部はどうやら休みらしく、幸子の身の安全を考えて春香は幸子と一緒に帰ることとなった。高貴も高貴で部活を休んでまで、しかもポケットの中には彫刻刀を持ち防衛できるようになっている。
隼人は念のためポケットにカッターナイフを入れておいたが、傍から見ればかなり危険な不良である。
幸子は『こいつらどうにかしないと』と言いたげな顔をして下校道を歩いていた。
「いつ仕掛けてくるかわからないからな、学校側に電話したとなると、不意打ちには注意しないと・・・。」
そして智雄は肩に弓を掛けている。どういうこと・・・?
「智雄、それはやりすぎだ・・・。」
「えぇぇ、でも幸子さんの身に何かがあったら・・・。」
「俺はそこまで柔じゃない。しかも前のあの回し蹴り見ただろ?今回は脅迫されても弱み一つない。」
「あのときの回し蹴りは、ちょっと意識飛んだよ。改めて幸子が只者じゃないってことがわかったぜ・・・。」
高貴は畏敬の念を持ってしまっている、
下校時は問題なかったようであった。
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幸子は隼人達と解散したあと、すぐに山岡外科へ向かった。奈々子はその病院に置き去りであった。
「朝、腹痛いって言って、学校に行けなかったからそのままsigの病院に投げ込んできたからな、ちょっとsigに謝っておかないとな...」
そういって山岡外科のドアに手を掛けて、中に入る。
するとsigは診察室でイスに座りこめかみに手を掛けて眠っていた。近くには奈々子が眠っていた。
「やれやれ、おいsig起きろー!奈々子も!」
そういってsigの体を揺らし、続けて奈々子の体もゆする。
「うぅ..ん、むにゅぅ...」
眠そうな声で眼を擦る奈々子。
しかしsigだけは眼を覚まさない。
「んぁ...お母さん、お帰りぃ...むにゃむにゃ」
「お腹の調子はどうだ?あの服着て寝たのが間違いだったな。」
「もう大丈夫だよぉ...う~ん、今度からパジャマじゃないとダメかなぁ...」
「そうだな、」
そういってsigの体を揺らす。
「あ、sigさんは疲れているから起こさないで!」
奈々子が声を上げる。
「あ、ああ。」
「それより、お母さん。相手が誰なのか、私-----------」
突然真剣な顔つきで幸子は『またかよ・・・。』という顔になって聞き始めた。
「もしかして、あの登紀子って人が犯人・・・?」
「・・・・・・・・・ッ!? どうしてわかった・・・。」
「sigさんから、問い詰めて聞き出したの・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・。(絶句)」
「お母さんがあんなになるなんて、戦場とか、テロリストとの交戦の後だと思ってたけど、まさかああなるなんて・・・。しかも、あまっちょろい弱弱しい女子高生に数人掛かりで・・・。」
「・・・・・・・・・。大丈夫だ、倍返しするから・・・。お母さんは大丈夫だから・・・。」
悲しそうな顔をする奈々子を宥める。
「でも、私もつらいもん。やっぱり私が----------」
「ダメだ、これは俺の問題だ。」
「うぅ~、」
「奈々子、わかってくれ・・・。お前の鉄拳だけで人殺せるかもしれないんだぞ・・・?」
「うぅ~、」
ひたすら何かに追い詰められたような声をあげて泣き出しそうになっている。
そして数十分後、やっと奈々子を宥めることが出来て、その頃にsigが目を覚ましたので挨拶をして山岡外科を後にした。
帰り際に幸子はつぶやく、
「いよいよ、校内大戦争が始まるな・・・。」